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リアルよりリアリティ。

Tue.15.02.2011
昭和天皇「ヒロヒト」を描く「太陽」を観る。
アレクサンドル・ソクーロフ監督、ロシア、フランス・スイス、イタリアの合作映画だ。
実質的にはロシア映画ということになるのかな。
3年ほど前にも一度観た。が、このときより深く落ち着いて鑑賞することが出来たのでここに書いておきたい。



エンペラー、現人神として君臨する日本の君主、昭和天皇。彼についての映画だ。
舞台は昭和20年、夏。終戦間際の東京で、当時昭和天皇は何を思って日々過ごしていたのか…。


現在日本では天皇について映画作品を作ったとしても、いわゆる「菊タブー」により一般公開は非常に難しいといわれてる。
これは未だどこか日本人に、天皇は神聖にして侵すべからずという道徳観が根強く残るからだと思う。
(本来なら日本人により確かな歴史考証がなされ、「ヒロヒト」という一人間の内面を描く映画や作品がもっと表舞台に立つべきだと思う。)

とにかく、これは外国映画として昭和天皇その人の1945年夏の数ヶ月を追った作品。

ストーリーについてここで細かくは書かない。そもそも史実に書き記されている出来事よりも彼の日常においての空気感を丁寧に汲み取った映画である。
冒頭からいきなり、侍従(という言葉でいいのでしょうか)の人々とのある種緊迫した空気から物語は始まる。
君主の生活に自由などどこにもない。
(この部分には若干ヨーロッパ的な様式の中での主従関係が見え隠れするように個人的には感じるのだが、これは観た人と話し合いたい)



そしてこの作品の最大のミソ、僕にこの作品についてここまで長文感想を書かせる最大の理由ーーーーー

それは、この作品が日本国の現在の象徴、天皇を扱っているにもかかわらず外国作品、中でもヨーロッパ、もっと言えばロシア監督の作品だということだと思う。
日本人のチームでは描けないことを大胆に描いている。
勿論外国から見たものが正しい訳ではない。日本には日本という国の歴史があり、そこには日本人にしか理解し得ない価値観があり、哲学がある。
(70年前の日本がどれほどまで欧米ナイズされ、その政治的中枢の空気まで日本古来の人間関係が尊重されていたのかは僕にはわからない。ただ少なくとも大政奉還から70年、日本がここまで西欧化されていたことにも驚く。)


しかしこの作品が素晴らしいのは、記録するという監督の姿勢だ。この作品を見終わった後、何か政治的な主義や主張を感じることがない。
これがこの映画の一番の凄みだと僕は思う。徹底したリアリティのみを目指して映画を撮っている。
勿論ロシア人の彼がリアリティを突き詰めていけばいくほど、日本人とはどんどんずれていくという事態に陥ることも可能性としてはあったと思う。
実際に作品を観ていて、ロシア人の彼に流れる根底が日本人の感覚や当時の資料からは外れたところもあるように感じなくもない。

が、僕はむしろこのロシア人の監督が自分の出来るだけのリアリティを信じ、その痕跡を映像の中に刻もうという気概を感じるという一点においてでも、この作品を評価したいと思う。



そして僕がこの映画の中でそんなところを一番強く感じた部分がどこかと言うと、それは彼(ヒロヒト)が結局、何も多くを語らないところ。
この撮り方が、なんとも潔い。
僕はディテール云々よりもそこに対して彼を監督として信用出来るのだ。






昭和天皇という存在。あなたはどう考えますか。

僕にはまだわからないです。あまりに膨大な資料の中、僕はきっと紙切れ一枚ほども読み切れてはいないように思う。
ただ、20世紀という戦争の時代に生きた君主として、彼を抜きにしては何も語れないのは確かだと思います。
僕たちが生きる21世紀の中、日本がもう一度戦争をする可能性もゼロではありません。いやいや、戦争はいつ起きてもおかしくない。
そんなとき大事なのは知識です。過去にあったことを学ぶことが大事。
戦争がどのようにして起こるのかなんて。。これほど難しいことはない。何百人何千人から何国という規模での話。
途方もなく大きな濁流ですが、考えることはやめてはならない。
情報社会に生きている以上、僕たちは与えられる情報だけに頼って生きるべきではないと僕は思う。
とにかく、これからもずっとずっと考え続けていくべきことであるのは確かでしょう。





さて、長文を書きましたが僕がこの作品を観て一番強く感じたことを書きます。
それは、リアルよりリアリティということです。

この作品はロシア人の監督によって描かれましたが、ハリウッド映画が作る嘘くさい日本の風景はワンカットも出てきません。
相当長い時間をかけて取材したんだと思います。
そこがまずリアル。

で、それを超えるんです。リアリティが。
たとえこの映画の話が嘘の世界だったとしても、それを超えてしまうような世界観がこの作品にはあります。

「本物よりも本物っぽい」ということです。
これが何より一番、僕がこの作品が目指す高みを感じた部分です。
気合い入れて作った作品だと思いますよ。
政治的な見方がたくさん介入する映画ではありますが、結構みんなそんなもんですよ。
映画も音楽も、芸術はそういうものに瀕して闘っている訳です。
芸術すらもそうなんだから、日々の生活がいかにそういうもんに冒されているか。

まあ、それはいいか。とりあえず。



映画は素晴らしい。如何様にも見方がある。やはり最高です。


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